平成22年度春季講演会「日本におけるジオパーク活動の現状」
東京地学協会では、評議員会・総会に引き続き、標記講演会を開催いたします。奮ってご来場ください。
日 時
平成22年5月29日(土)15:00~16:30
場 所
東京地学協会講堂
講 師
渡辺真人(産業技術総合研究所 地質情報研究部門)
要 旨
ジオパークは、ユネスコが支援する世界ジオパークネットワーク(GGN、2004年設立)が推進する活動である。現在21ヶ国66地域がGGNに加盟する、“世界ジオパーク”である。GGNが推進するジオパークは、地学系の自然遺産である大地の遺産を保全し、研究・教育・普及に生かし、エコツーリズムの地学版とでもいうべきジオツーリズムに活用することで地域の持続的発展を目指す。ジオパークが各地に設立されると、大地の遺産の保全、市民の自然に対する科学的理解の向上と、それを通じた防災意識の向上や地球規模の問題への正しい理解、地域の持続的発展、さらには地学を学んだ学生の就職先の拡大につながる。2008年5月に地球科学関連学会の支援と関連省庁の協力の下設立された日本ジオパーク委員会(JGC)が、日本のジオパーク候補地の評価と認定、世界ジオパークネットワーク加盟申請への評価と推薦、既存ジオパークの活動への助言を行っている。現在日本には11ヶ所のジオパークが認定されており、それらが日本ジオパークネットワークを設立し、ジオパークの広報や普及を行っている。11ヶ所のうち洞爺湖有珠山、糸魚川、島原半島の3ジオパークはGGN加盟2009年8月に認められた世界ジオパークであり、2009年12月にGGN加盟申請を行った山陰海岸ジオパークが現在GGNの審査を受けている。
GGNが掲げるジオパークの理念においては、ジオパークにおけるジオツーリズムによって地域経済が活性化し、地域自らの力で大地の遺産の保全と研究・教育・普及への活用を行っていくとしている。この理念に従い、日本のジオパークでは、地域の地形・地質のガイドの養成や、ガイドブック・マップの整備が進み、ジオツアーを行うと共にジオ関連商品の開発と販売が行われている。このような動きによって、研究者の力だけでは限界のある地学の普及と活用が、各ジオパークの地域住民の力で行われていくことが期待される。