第304回地学クラブ講演会(1月)の予定が決まりましたのでお知らせします。一般(非会員)の方々も気軽にご参加下さい。多数の方々のご来場をお待ちしています。

日 時

平成30年1月19日(金)14:00 ~ 15:35

場 所

東京地学協会地学会館2階講堂(東京都千代田区二番町12-2)

交 通

東京メトロ麹町駅5出口を出て左へ徒歩1分
日本テレビ向い JR市ヶ谷駅から徒歩7分、四ッ谷駅から徒歩9分)

演 題

東北日本弧のマグマ供給系と地殻・マントル構造

講演者

吉田武義(東北大学名誉教授)

要 旨

 東北日本弧は、古くて冷たいプレートの沈み込みに伴って形成された島弧海溝系の一つである。後期新生代にユーラシア大陸東縁部に位置する陸弧において、日本海盆や大和海盆などの背弧海盆が発達し、現在の東北日本弧が形成された。そこでの火成活動は周囲のプレートとの相互作用や広域応力場の変遷、堆積盆の隆起・沈降などの構造発達史と密接に関連しており、マグマの活動様式や化学組成、総噴出量、マグマ供給系の構造などの時代的変遷に基づいて、13のサブステージに区分することができる。東北日本弧では、この間、一貫して沈み込み帯火成活動が継続しているが、マグマ組成は陸弧期から、背弧海盆期、そして島弧期へと系統的に変化しており、これはマグマ分離深度の変化を通して、マントルやその上に重なる地殻の温度構造や起源物質の配置と関係していると考えられる。マグマの噴出量はマントルや地殻の熱構造とともに応力場の状態に大きく左右され、広域応力場が背弧海盆期から島弧期へと、引張場からニュートラルな場に変化するのに伴い、マグマ噴出量が急激に減少している。このとき、背弧側に火山活動の軸部があるリフト火山活動から、火山フロントから背弧側へと単調にアルカリが増加する通常の島弧で認められる火山活動へと変化している。さらに東北日本がニュートラルな応力場から強い圧縮応力場に変化するとともに、火山活動は少量の玄武岩と多数の陥没カルデラを形成する活動から、カルクアルカリ安山岩を主とする成層火山主体の活動へと変化し、4列の火山列が出現する。カルデラ火山の多くは 1Ma 前後に活動を終えているが、脊梁山脈沿いの安山岩質成層火山の多くは、1.5Ma 前後に活動を開始し、0.6~0.5Ma 以降、強い東西性圧縮応力場の下で、噴出率がそれまでの2倍以上に増加している。このように、沈み込み帯での火成活動は、その構造発達史と密接に関連しながら、その様相を大きく変化させている。