日 時
平成28年12月16日(金)
15:00から 青山雅史氏
16:00から 田中耕市氏
場 所
アルカディア市ヶ谷(会場は当日入り口に掲示します。)
交 通
地下鉄有楽町線・南北線・新宿線・JR中央線「市ヶ谷駅」下車2分
講演1「東北地方太平洋沖地震による内陸部における液状化被害に関するインベントリー作成」
講演者
青山雅史(群馬大学)
本講演では,平成25年度東京地学協会研究・調査助成金による研究成果と,その後継続して実施した2011年東北地方太平洋沖地震における液状化発生地点の土地条件に関する研究成果について紹介する。また,2016年熊本地震における液状化に関する話題提供も行う。
東北地方太平洋沖地震による内陸部における液状化発生地点の分布について,現地踏査とGoogle Earth画像の判読により明らかにした。また,それらの地点の土地条件や土地履歴について,多時期の地理空間情報を用いてGISによる解析を行い,検討した。その結果,関東地方東部から東北地方南部太平洋側における液状化発生地点の分布と液状化被害の状況に関して,多くの情報を得ることができた。内陸部における液状化発生地点は,明治期以降の河川改修による河道付け替えで廃川となった河道や,河川沿いに多数分布していた湖沼などを,宅地や農地などの造成のため1950年代以降浚渫砂で埋め立てた領域(旧河道・旧湖沼)において集中的に分布していた。茨城県神栖市と鹿嶋市においても多くの地点で液状化が発生したが,その多くは1960年代後半以降に砂利採取のため掘削され,その後埋め戻された領域(砂利採取場跡地)において発生した。砂利採取場跡地における液状化は,この地域のみならず関東地方東部と東北地方南部太平洋側の多くの地域において発生していたことが判明し,2016年熊本地震においても発生した。それらの多くは,後背湿地や自然堤防などの自然地盤における液状化とこれまでみなされていた。日本列島の沖積平野には砂利や砂鉄などの採掘が行われた履歴を有する地点が多く存在しているが,それらの詳細分布に関する情報は乏しく,液状化発生危険度評価の際にそれらの分布が考慮されることは少ない。今後,砂利採取場跡地などの詳細分布,表層地盤や地下水位に関する情報を精査し,液状化発生危険度を再検討する必要がある。
講演2「地理的条件からみた「津波からの避難しやすさ」の定量的評価」
講演者
田中耕市(茨城大学)
過去に巨大津波を幾度も経験してきた日本では,東日本大震災以前から津波ハザードマップの作成が進められていた.しかし,同震災で経験した津波は従前の想定をはるかに超える規模であったため,津波ハザードマップは大幅に修正されることになった。2012年には内閣府政策統括官から,近い将来に発生することが確実視されている南海トラフ地震について,津波高や浸水域,到達時間などの推計結果が公表された。一部の沿岸地域における最大津波高が30mを超えるという予測がセンセーショナルに報道された結果,沿岸地域の自治体や住民の不安が増長されているきらいもある。
しかしながら,津波ハザードマップでは特定地点における津波浸水高等の情報が提供される一方で,その場所の「避難しやすさ」という情報は提供されていない。東日本大震災では,地震後の迅速な避難行動こそが人命を守る最善の選択肢であることがあらためて証明された。すなわち,津波から人命を守るためには,その場所の津波浸水高だけではなく,「避難しやすさ」を合わせて考慮しなければならない。
津波からの「避難しやすさ」の程度は,周囲の地理的条件(津波から逃れられる高い標高地点,避難路として活用される道路ネットワーク,緊急避難先として利用される中高層建築物の立地の有無など)に大きく依存する。本報告では,地理的条件からみた「避難しやすさ」について定量的に評価する指標を検討するとともに,南海トラフ地震による津波被害が予見されている四国地方沿岸部を事例として,津波からの「避難しやすさ」を評価する。