地学クラブの予定
会場:東京地学協会講堂
講演終了後,1時間ほど講演者を囲み懇談の時を設けております。お気軽にご参加ください。
12月は17:30から年末懇談会があるので開始時間が変わります。
◆12月20日(水)15:30~17:00
「地下利用におけるROCK MECHANICSの課題ー石油備蓄を例としてー」
星野一男(元地質調査所(現産總研)燃料資源部長)
ROCK MECHANICS は一般に「岩石物性」または「岩の力学」と翻訳されている。地質、岩石、鉱物、地震などの理学から鉱山、石油、土木、建築などの工学を含む広範な境界領域である。発足以来半世紀を経て多くの成果が生まれると共にさまざまな課題も浮かび上がってきている。
石油の地下備蓄は石油危機問題に端を発して具体化された国家プロジェクトである。約10年の調査期間を経て、1994年に数百万平方米の断面と数百米の長さを持つ巨大な地下トンネル(複数)内に計5百万キロリットルの原油が貯蔵された備蓄基地が完成した。このプロジェクトにおいて事前の地質調査から、適地選定、地下建設工事の諸段階で「岩石物性」、「岩の力学」ガどのように関わってきたかを振り返って、理学と工学の効果的な連携について考察する。
-2005年-
◆1月20日(木)14:00~15:30
「2004年新潟県中越地震が提起した活断層・地震防災の問題点」
鈴木康弘 (名古屋大学大学院環境学研究科)
活断層が単なる地学の研究対象でなくなって久しい。奇しくも兵庫県南部地震から10年目に発生した新潟県中越地震は,活断層・地震防災の問題点を再提起した。2004年末には推本による活断層評価が一通り終わる。この時点において,中越地震における地震と活断層の関係を見ながら,活断層に関する防災研究上の問題点を整理する。
◆2月18日(金)14:00~15:30
『「地学史」のおもしろさ』
矢島道子(成蹊大学非常勤講師)
昨秋,機会があって「地学史」の本を上梓することができた。上梓した『はじめての地学・天文学史』のなかで,近代以前の宇宙論や地球論の物語から,近代的な天文学や地質学の成立史,そして20世紀の地球変動論の発展史までを,できるだけ分かりよく解説した。この「地学史」本には3つの思い入れがあった。
1.これまでに,物理学史,化学史,生物学史に関する日本語の教科書は比較的多く出版されているが,地学史の一般書はまれである。ようやく地学史研究者のなかまが日本で育ってきたので,今後の規範になるような本を作りたいと思った。
2.最近,地学の地盤沈下が激しく,特に高校では地学の授業がなくなろうとしている。しかしながら,地学の好きな人はたくさんいるのだから,おもしろい本を作りたい。
3.今回は地質学史的内容と天文学史的内容を1冊の本に入れた。人間の外界への認識がどのように進んできたのかという視点にたっている。こういった視点にたつ「地学史」の本は今まであまりない。
この思い入れがうまく成就したかはわからないが,私自身は,押さえきれないような「地学史」研究の歓びに引き込まれている。それは,野外調査の繰り返しの中で,今までとは違う証拠をみつけ,新しい理論を提唱しようとする地質学そのものとまったく同じである。上梓した本に書ききれなかった「地学史」のおもしろさを紹介したい。
◆3月18日(金)14:00~15:30
「GPS連続観測で見る日本列島の地殻変動とその地学的意義」
鷺谷 威(名古屋大学大学院環境学研究科)
現在,日本列島にはGPS(全地球測位システム)の連続観測点が約1200カ所設置 され,各観測点の座標値の変化が継続的にモニターされている。この観測は高精度であることに加え,測地測量による地殻変動観測の時間分解能を従来よりも3桁程度向上させたことにより,地殻変動研究に一大ブレークスルーをもたらした。例えば,GPS連続観測 によって地震や火山噴火に伴う地殻変動が短時間のうちに正確に測定できるようになった。また,定常時における地殻歪みの蓄積状況が明らかにされ,日本列島内陸部に歪み集中帯が見つかった。2004年新潟県中越地震は,まさに歪み集中帯の地震空白域で発生した。さらに大地震に続いて起きる余効すべりの観測や非地震性すべり(ゆっくり地震)の発見によって,プレート境界における物理過程の理解が進むとともに断層運動の多様性も明らかにされた。また,最近では,高速サンプリングされたGPSのデータ解析によって地震波の検出も可能になっている。
このように,GPS連続観測は地殻変動観測の単なる高精度化ではない。測地測量がカバーする周波数帯を広げて地震観測との間にあったギャップを解消し,地球を見る我々の視野を広げたことにこそGPS連続観測の本質的な意義がある。
◆4月20日(水)14:00~15:30
「持続可能な文明への転換と再生可能エネルギーの利用拡大」
新妻弘明(東北大学大学院環境科学研究科長)
京都議定書の発効を待つまでもなく,現代文明は持続可能な文明への転換をせまられている。そこでは再生可能エネルギーの利用拡大が重要な課題であるが,現在必ずしもそれが順調に進行しているとは言いがたい。筆者は再生可能エネルギー利用拡大の戦略として,需要地においてそこに賦存する再生可能エネルギーを技術的,経済的に許す限り最大限利用する社会システム・エネルギーシステムであるEIMY(Energy In My Yard)の概念を提唱するとともに関連する一連の研究を行っている。本講演では,再生可能エネルギーの特性とその利用拡大を阻む様々な問題点について述べ,次に,我が国現代社会においてEIMYを実現することの意義とそのための課題について実例をあげながら説明する。さらに,石油,プロパンガスの導入により失われた我が国の古来のEIMYについて考察し,現代の化石燃料に依存した文明の問題点を指摘する。
◆5月20日(月)14:00~15:30
「最近の地磁気研究について」
歌田久司(東京大学地震研究所)
◆7月20日(水)14:00~15:30
「最近の地質年代区分事情」
斎藤靖二(国立科学博物館名誉館員)
◆9月20日(火)14:00~15:30
「陸が変われば海も変わる:沖縄における大正期以降の土地利用変化とサンゴ礁浅海域の変化」
長谷川 均(国士舘大学文学部地理・環境専攻)
◆10月は秋季講演会(10/22)のためお休み。
◆11月18日(金)14:00~15:30
「日本にもジオパークを!」
岩松 暉(特定非営利活動法人地質情報整備・活用機構)
自然多様性条約が発効し,絶滅危惧種の保全が叫ばれている。条約では「その生息環境とともに」生物多様性を保全すると謳っている。そこで地質多様性(geodiversity)の保全が課題となってきた。ジオパーク(geopark)もそうした趨勢の中で生まれたユネスコのプロジェクトである。中国では地質公園と漢訳している。ユネスコ地球科学部長(当時)のF.W. Eder氏によれば,ユネスコの支援するジオパークは,1)次世代のために地質遺産を守る(保全),2)地質景観や環境問題について広く大衆を教育し,地質科学に研究の場を提供する(教育),3)持続可能な開発を保証する(ジオツーリズム)のだという。2004年に認定を開始し,現在中国12箇所,ヨーロッパ21箇所計33箇所認定されている。このプロジェクトに当初から熱心に取り組んできた中国・ドイツに多く,わが国には一つもない。このような大陸の地質だけでは片手落ちである。ぜひ島弧の代表として,わが国にもジオパークが欲しいものだ。
◆12月20日(火)15:30~17:00
「フィリピン海プレートが支配する日本列島のテクトニクス」
高橋雅紀(産業技術総合研究所 地質情報研究部門 地球変動史研究グループ)
講演終了後,年末懇談会を行います。
-2006年-
◆1月20日(金)14:00~15:30
「宝石の話」
鈴木淑夫
◆2月20日(月)14:00~15:30
「石油探鉱のパラダイム変換と“ピークオイル”」
井上正澄(エムシーエクスプロレーション(株))
◆3月22日(水)14:00~15:30
「アジア大陸内部の乾燥化(仮題)」
遠藤邦彦(日本大学文理学部)
◆4月20日(木)14:00~15:30
「最近の地震被害の特徴」
伯野元彦((財)震災予防協会会長,攻玉社短期大学学長)
◆6月20日(火)14:00~15:30
「大陸棚画定調査について」
加藤幸弘(海上保安庁海洋情報部)
◆7月20日(木)14:00~15:30
「能動監視による浜名湖周辺の非地震性すべり検出の可能性」
鶴我佳代子(東京大学海洋研究所)
◆9月20日(水)14:00~15:30
「有孔虫の殻の酸素・炭素同位体比に基づく過去15万年間の日本海と鹿島沖の環境変化」
大場忠道(北海道大学名誉教授)
◆11月20日(月)14:00~15:30
「地下に拡がる生物圏:地下圏生物学研究の現状と将来」
北里 洋(海洋研究開発機構)
地球表層部にのみ分布していると考えられてきた生物圏は、地下深部にまで拡がっていることがわかってきた。微生物を主体とする地下の生物圏はバイオマスで計ると地表の生物量を上回ると計算されている。それらは、地下のどこまでおり、何をしているのだろうか?講演では地下生物圏研究の現状について紹介し、この研究に地学がどのようにかかわることができるのかについて議論する。