Home ニュース 見学会・巡検開催報告 平成29年度国内見学会「都心1日ジオツアー」「国会議事堂と江戸城の石材を見に行こう-都心の地形を実感する街歩きとともに-」開催報告

 国会議事堂は、1918年から計画され、1936年に完成しました。国会議事堂の建築に際して、全国から大理石や御影石が集められ、今も40種類近くの国産石材を見ることができ「国産石材の博物館」とも言われています。また、江戸時代にも、全国の大名が徳川幕府のために集めた石材で江戸城の石垣等は建築されています。一方、武蔵野台地(麹町台地)の東端に位置する江戸城を中心とした東京の都心地域は、台地に複雑に入り組んだ深い谷で構成されており、国会議事堂と江戸城をつなぐルート上では、都心の凸凹地形を実感する街歩きが可能です。

 そこで、今回の国内見学会では、日本水準原点、国会議事堂内の石材見学、江戸城外堀遺構、皇居東御苑内の江戸城本丸天守台などの見学を徒歩でつなぐ「都心1日ジオツアー」を実施しました。以下に、その実施概要を報告します。

日程:平成30年2月25日(日)9:00~16:30
参加者:25名(男性13名、女性12名)+ 案内者4名 計29名
案内者:青木正博(産業技術総合研究所/東京地学協会理事・行事委員長)
中澤 努(産業技術総合研究所)
久保純子(早稲田大学)
三橋浩志(文部科学省/東京地学協会行事委員)

 時間通り9時10分までに憲政記念会館前に25人の参加者が集合し、案内者4名の紹介、挨拶とともに、「都心1日ジオツアー」はスタート。憲政記念館前の公園内に設置された日本の標高(高さ)の基準点である「日本水準原点」を見学。明治6年から6年間にもわたる東京湾の潮位観測から得られた標高データ、佐立七次郎によるトスカーナ風の近代建築設計の歴史などの解説を聞きます。さらに、江戸城桜田門を見下ろし、武蔵野段丘の高さと「桜田門外の変」について思いをはせます。

▲日本水準原点を見学

 国会議事堂は、全国から40種類もの石材を集めて建設されています。今では生産されていない石材もあり、「国産石材の博物館」とも言われています。その国会議事堂で、外壁の御影石(花崗岩)、内装の大理石(石灰岩)などをじっくりと見学。

▲国会議事堂の外壁(花崗岩)の観察
下部は山口県黒髪島産の御影石「徳山石」、上部は広島県倉橋島産の御影石「議院石」

▲衆議院西階段の内装を観察
壁は山口県美祢市産の大理石「山吹」、階段(床)は山口県美祢市産の大理石「薄雲」、

▲中央広間の石材を観察
壁や柱は沖縄県本部町産と宮古島産の大理石「琉球石」

▲衆議院2階廊下の内壁を観察
壁は石川県産の凝灰岩「日華石」

▲国会議事堂前での集合写真

 国会議事堂の見学を終えると、首相官邸脇の谷地形を実感しながら江戸城外堀で江戸市中の飲料水源でもあった溜池の跡を見学。昼食会場の霞ヶ関ビルに移動し、昼食後は、文部科学省の改築時に発見された江戸城外堀遺構を見学。「天下普請」により全国の諸大名が担当したことを示す刻印も確認。

▲霞が関ビルの前で見学可能な江戸城外堀の石垣を見学

▲文部科学省の旧庁舎に隣接する江戸城外堀遺構の見学

 その後、霞が関の官庁街を三年坂、汐見坂、霞が関坂を見学しながら、武蔵野台地と日比谷入り江の高低差を実感しながら移動。外桜田門と内桜田門の「枡形門」を通り抜け、二重橋、和田倉門、大手門から皇居東御苑まで、「東京マラソン2018」のゴール地点(東京駅前・行幸通)を横目に移動。途中では、丸の内低地の地質等の説明も聞きます。

 江戸城正門の大手門から皇居東御苑に入場。三の丸、二の丸、本丸と攻め上ります。中之門跡では、大型の花崗岩が隙間無く積み上がった「切り込みはぎ」を観察。大番所、百人番所、同心番所の建物を見学して、江戸城天守台の石材を観察。

▲中之門跡の石垣を観察。瀬戸内海産の花崗岩と、伊豆産の安山岩で構築

▲江戸城天守台を観察。約11メートルの天守台に登り、東京の街を眺望

▲平川門、梅林坂の満開の梅の前で集合写真

 皇居東御苑を平川門から出て、竹橋駅前で予定通り16時10分に解散。今回の国内見学会は、約6kmを徒歩移動する「都心1日ジオツアー」でしたが、参加者の皆さんのご協力で無事に開催することができました。国会議事堂内を定められた見学コースを参観することはできますが、見学コースを離れて、議事堂内の石材を自由に見学することは出来ません。今回、普段は見ることが出来ない国会議事堂内の石材を見学できるということで、25人の定員に多数(50人)の応募がありました。50人で実施することや2グループに分けることも検討しましたが、見学会の充実を図るため、やむなく厳正な抽選を行いました。抽選に漏れた方には、本当に申し訳なく思います。今後、衆議院との調整ができれば、機会を見て、同様の見学会をもう一度開催できればと考えています。

 江戸、東京の都心に全国から集められた石材を都心の凸凹地形を体感しながら観察し、江戸、明治、大正、昭和の各時代の歴史や風景にも想いをはせながら、2月の都心を1日歩くことが出来た国内見学会でした。

(記録:行事委員 三橋浩志)
【参加者の声】

 国会議事堂の花崗岩や大理石などや、皇居の花崗岩などを丁寧な説明を受けながら一通り体験することができました。私は国会議事堂に入ったのは初めてだったので、このことも良い体験になりました。今後、初心者向けに火成岩に絞ったツアーも計画して頂くとありがたいと思います。特徴的な火成岩の種別や構成鉱物の種別が分かるツアーが嬉しいです。火成岩がちょっと分かると、岩石への興味も違って来るような気がします。1日ツアーありがとうございました。

(世田谷区・男性)

 

 日本水準原点、国会議事堂の石、都心の地形、江戸城外堀遺構、江戸城本丸の石垣と見どころの多いジオツアーでした。議事堂外壁下部に山口県産みかげ石「徳山石」外壁上部に広島県産みかげ石「議院石」が選ばれた理由、花崗岩の結晶形や注目点について説明を受けた後、議事堂内に入りました。廊下や階段の手すり、柱や暖炉に使われている日本各地から集められた見事な大理石について、その模様の出来方や化石について詳しい解説をして頂きました。霞が関ビル内のイタリアンレストランでの昼食も楽しめましたし、配布資料もカラー写真を多数使った内容の充実したもので、見学ルートや時間配分も周到に準備検討されたものでした。今回のジオツアーを企画し案内して下さった先生方にお礼申し上げます。

(八王子市・男性)

 

 「国会議事堂と江戸城の石材を見に行こう」というタイトルにひかれ申込しました。日本水準原点の見学。存在する場所は知っていましたが、初めて見ました。そもそも普通に見学に入れるとは思ってもいませんでした。彦根藩上屋敷(憲政記念館)から桜田門が目の前に見え、わずかこの距離の所で暗殺があったとは驚きました。国会議事堂を自然史博物館にしたらよいとの声が出ていましたが、本当にそのとおりですね。日本各地から石材が集められ、化石が多く含まれる国会内の石材は自然の宝の山だと思いました。国会議事堂から文部科学省の間には、多くの歴史的遺物が多くあるにもかかわらず、普段はまったく目に入らず、見過ごしていることにも気づきました。これからは、町のなかを歩いていても見る目が変わってくると思います。資料については配布されたときにビックリしました。今、読み返しても楽しい。力のこもった資料で、資料を作成した方の熱意が伝わってきます。地学協会の皆様には、大変お世話になりました。有難うございました。

(世田谷区・男性)