国内見学会(巡検)のお知らせ(第2報)
“火山の脅威を知る”支笏火山・有珠火山-過去および現在の噴火-

日 程:2004年10月1日(金)~10月3日(日)
企画主催:(社)東京地学協会
受託旅行会社:北大生協旅行事業部

はじめに

記憶にも生々しい2000年の有珠火山噴火では,自然の猛威を前に,いかに人間が無力かを知らされた。幸いに大規模な噴火活動にも関わらず住民は一人の犠牲者も出さずに避難することができた。それは研究者による直前の噴火予知と地方自治体の自発的な退避勧告とが連携したからであり,混乱もなく退避が完了した。その背景には1978年噴火の体験を通じて,火山の猛威を正しく理解することの重要性がある。特に北海道大学理学部付属有珠火山観測所の研究者による継続した観測活動とその結果の一般への周知が,火山の猛威を正しく理解し,また火山と共生する道を探ってきたからである。今回の巡検では過去そして現在の火山活動を理解し,またいかにして火山の猛威に備えるかを,北海道支笏・有珠火山を歩きながら学ぶ巡検を企画した。
巡検はまず千歳空港近くにある火山灰層の露頭観察から始まる。そこには過去14万年に遡る火山噴火の歴史が残されている。火山灰編年学手法による最新の解析結果について,露頭を前に専門家に解説してもらう。その後支笏湖畔に移動し,支笏カルデラ形成以降の火山活動と地形形成について観察する。その夜は支笏湖畔のホテルに宿泊し,湖畔の露天温泉に浸かりながら火山の恩恵を味わい,また専門家による噴火史をおさらいするセミナーを開催する。
翌日(10月2日)は有珠火山に移動し,2000年噴火による断層地形や,家屋への被害の生々しい爪痕を巡り,さらに火口を辿りながら1978年,2000年噴火活動とそれに伴う地殻変動の跡を見学し,火山の猛威を体験的に理解する。夜は洞爺湖畔に宿泊し,温泉に浸ることで火山の恩恵に浴した後に,住民の方々との交流会を開く。火山と共生していくためには,火山への正しい理解が不可欠であり,そのためには研究者・地域住民・地方自治体との緊密な連携こそが重要であることを学ぶ。

スケジュール

  • 10月1日 11時 千歳空港集合(集合場所は後に通知します) →空港周辺 露頭→支笏湖畔→支笏湖温泉
  • 10月2日 9時より 支笏湖畔→有珠火山→火口付近→洞爺湖温泉
  • 10月3日 洞爺湖温泉→昭和新山→千歳空港 解散(16:00頃)


旅 程  東京からの参加者には以下の航空便が団体扱いで搭乗できます。  
取り扱い 北大生協旅行事業部
10月1日  
ANA53便  羽田08:00→千歳09:30 16300円  
ANA55便  羽田09:00→千歳10:35 16300円
10月3日  
ANA72便  千歳17:30→羽田19:00 20300円

宿泊予定
・10月1日 支笏湖観光ホテル 
2名1室 一人 12000円(税込) 1名利用の場合,一人 24000円(税込)
・10月2日 洞爺湖万世閣  
2名1室 一人 16900円(税込)。 1名利用については旅行社にお問い合わせ下さい。

必要費用
◇東京からの参加の場合
航空券と宿泊(2泊 朝食と夕食を含む):約73000円
これ以外に各自が負担する分:昼食代,傷害保険料(500円程度)
◇札幌(道内)参加の場合
宿泊(2泊 朝食と夕食を含む):約36500円
これ以外に各自が負担する分:昼食代,千歳空港までの運賃,傷害保険料(500円程度)

持参必需品 雨具,軽登山靴,ヤッケ,防寒用セーター

参加申し込み
巡検参加申し込みは直接“北大生協旅行事業部”へ御連絡ください。
〒060-0808 札幌市北区北8条西8丁目 北大生協旅行事業部 Tel:011-728-0402
Fax:011-756-7971  e-mail: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください  (担当 寺澤)
(平日10:00-17:30,土曜日10:00-13:00)

申し込み期限 2004年9月中旬(定員になり次第締め切ります)

募集人員:約35名

◇巡検についての問い合わせ先:(社)東京地学協会 Tel:03-3261-0809  Fax:03-3263-0257

案内者 中村有吾博士:北海道大学大学院地球環境研究科地圏環境科学専攻 研究員

〈中村博士による巡検概要〉
千歳市周辺では,支笏カルデラ,クッタラカルデラ,洞爺カルデラなど北海道西南部の火山に由来するテフラを観察することができる。とくに千歳空港近隣の露頭で明瞭に観察できるのは,約4万年前の支笏カルデラ形成時に噴出された支笏第1降下軽石堆積物および支笏火砕流堆積物である。また,その上位には,恵庭a降下軽石(恵庭岳起源,17000年前),樽前d降下軽石(樽前山起源,約8000年前),樽前c降下軽石(約3000年前),有珠b降下火山灰(有珠山起源,西暦1663年)樽前b降下軽石(西暦1667年),樽前a降下軽石(西暦1739年)の累重が見られる。つまり,この露頭によって,支笏カルデラおよび周辺の活火山の噴火史をまのあたりにできる。

〈支笏湖畔での地形観察〉
支笏湖の広大な湖水域とカルデラ壁の地形を観察することで,4万年前の火山活動の凄まじさが理解できるであろう。また,支笏湖周辺の恵庭岳,風不死岳,樽前山の特徴的な火山地形が観察できる。

岡田 弘教授:北海道大学理学部付属地震火山研究観測センター

〈岡田教授による巡検概要〉
2000年有珠山噴火は小規模であったが,火口が居住地や道路に接近して開いたため,きわめて危険な噴火であった。多量の岩塊が幼稚園や民家,町道や国道230号線,更に高速道路をめがけて次々と降り注ぎ,着地の際にあちこちで土砂や積雪を噴き飛ばしていた。無数の噴石孔で屋根も畑地も一面穴だらけ,まるで戦争映画と見間違えてしまうような光景が,当時のビデオ映像に残されている。幸い,そこには逃げまどう住民の姿も,避難の車列の渋滞もなかった。直撃は避けられたのである。
一万人を超える住民の事前避難が可能となった背景には,科学者達の危機意識に始まる,地元住民・行政・マスメディアによる長年の減災文化構築への努力があった。また,前兆地震や地割れなど,火山が発するメッセージに迅速に応え,危機切迫に対して共通の理解と行動力で臨んだ直前の危機対応も画期的な出来事だった。幸い,噴火は小規模で懸念された火砕流は発生しなかった。しかし,噴石,熱泥流,地殻変動に加え,アパートが以前位置していた地点で発生した噴火など社会的なインパクトは甚大だった。
今回の企画は,火山の生々しい脅威を,残されている実物を見学し,対策に当たった方々や,地元住民の方々との交流を持ちながら,20世紀に4回もの噴火活動と付き合ってきた,有珠山を題材に地球といかに付き合っていくかを考え議論を深めることをテーマとしたい。  見学場所としては,2000年新山遊歩道(地盤変動と火砕サージ・噴石災害),条件が許せば地溝変形で階段状になった旧国道230号線や,金毘羅山火口群,熱泥流の跡地,1977年噴火による道路の断層や病院倒壊跡公園,昭和新山資料館などを是非とも見学したいと思う。

◇好天に恵まれ,無事終了しました。