Home ニュース 講演会・地学クラブ開催報告 地学クラブ第304回講演会報告
東北日本弧のマグマ供給系と地殻・マントル構造
▲東北大学名誉教授 吉田 武義氏
日 時:平成30年1月19日(金)14:00から15:30まで
場 所:東京都千代田区二番町12-2 東京地学協会(地学会館)講堂
参加者数:21名
講演内容:

 東北日本弧は、古くて冷たいプレートの沈み込みに伴って形成された島弧海溝系の一つである。後期新生代に、ユーラシア大陸東縁部に位置した陸弧において、日本海盆や大和海盆などの背弧海盆が発達し、現在の東北日本の島弧が形成された。この東北日本弧の基本構造は、背弧海盆活動期に形成された複数のリフト構造(ホルスト-グラーベン)がその後、強圧縮応力場で転移した構造である。


 東北日本弧の火成活動は、周囲のプレートとの相互作用や広域応力場の変遷、堆積盆の隆起・沈降などの構造発達史と密接に関連しており、マグマの活動様式やマグマ供給系の構造が、総噴出量やマグマ組成とともに時代的に変化している。この変遷に基づいて、東北日本弧の後期新生代における火成活動史は、活動的大陸縁の時代(66-21Ma)、背弧海盆の時代(21-13.5Ma)、島弧の時代(13.5-0Ma)、の3ステージに区分できる。


 東北日本弧では、この間、一貫して沈み込み帯火成活動が継続しているが、マグマの噴出量はマントルや地殻の熱構造と応力場の状態に左右され、広域応力場が背弧海盆期から島弧期へと、引張場からニュートラルな場に変化するのに伴い、マグマ噴出量が急激に減少している。このとき、背弧側に火山活動の軸部があるリフト火山活動から、火山フロントから背弧側へと単調にアルカリが増加する通常の島弧で認められる火山活動へと変化している。


 一方、マグマ組成は、陸弧期から、背弧海盆期、そして島弧期へと系統的に変化している。これはマグマ分離深度の変化を通して、マントルやその上に重なる地殻の温度構造や起源物質の配置と関係しているためと考えられる。すなわち、マントルにおける熱構造や対流パターンの変化に伴い、背弧海盆拡大期には背弧海盆玄武岩が大量に噴出し(玄武岩期)、それに続く島弧火山期の早期には、大量に発生した玄武岩の地殻への付加により、地殻が加熱され、一部溶融することにより、多くの珪長質深成岩体やカルデラの活動が起こっている(流紋岩/花崗岩期)。それに続く島弧火山期の後期には、それまでの北東-南西方向の横ずれ運動の場から、東西方向の逆断層の場に変わり、カルデラ主体の火山活動が、安山岩質成層火山主体の火山活動期(安山岩期)に変化している。


 東北日本がニュートラルな応力場から強い圧縮応力場に変化するとともに、火山活動は少量の玄武岩と多数の陥没カルデラを形成する活動から、カルクアルカリ安山岩を主とする成層火山主体の活動へと変化し、青麻・恐、脊梁、森吉、鳥海の4列の火山列が出現する。カルデラ火山の多くは 1Ma 前後に活動を終えているが、脊梁山脈沿いの安山岩質成層火山の多くは、1.5Ma 前後に活動を開始し、0.6~0.5Ma 以降、強い東西性圧縮応力場の下で、噴出率がそれまでの2倍以上に増加している。この増加は、上部地殻の冷却と強い水平圧縮応力の作用によって、マントルで発生した苦鉄質マグマと地殻に滞留していた珪長質マグマとが混合して大量の安山岩マグマが生じ、多数の成層火山を形成したためと考えられる。


 このように、沈み込み帯での火成活動は、その構造発達史と密接に関連しながら、その様相を大きく変化させている。


参考資料:
  1. 吉田武義他(2017)火山学(現代地球科学入門シリーズ) 共立出版408p
  2. 日本地質学会(2017)日本地方地質誌2「東北地方」 朝倉書店700p
意見交換:講演後、会場と演者で次のような意見交換があった。
会場:(火山活動域の)フリップフロップは、火山が形成される時とどのように関係するのか
演者:あくまで温度変化のシミュレーション結果が火山活動域の長期変動と対応しているということで、(個々の火山の活動期とは)直接は関係しない。
会場:フリップフロップの位置は地表の地質や地形と対応しているようだが
演者:フリップフロップの位置が(フィンガー状の)火山活動域と関係し、火山活動域が地形と関係しているので、両者が対応するようになる。
会場:堆積盆形成時代の地質構造とは対応しないのか。
演者:隆起が始まるのは背弧側が先で、その後、脊梁側へと移るが、これは火山の活動域の移動と同期しており、両者は関連していると思う。背弧側の構造は複雑で、脊梁側は単純だが、これは活動域におかれた時間の長さにもよるのではないか。
会場:安山岩の元になる珪長質のマグマはどのようにしてできるのか。
演者:カルデラを形成した地下のマグマ(花崗岩)と、それに伴う玄武岩は組成的特徴をともにし、それが時間変遷しているので、深部に由来する玄武岩が元になっている可能性は高い。
会場:背弧拡大期に花崗岩が同時にできたのかも知れない。溶けた地殻と玄武岩が混ざったのかも知れない。
演者:玄武岩と地殻由来の花崗岩が混ざったという場合も考えられる。