第253回地学クラブ講演会「ミューオンによる火山体の透視」

田中宏幸(東大地震研特任助教)

平成21年11月20日(金)14時~ 
東京地学協会講堂

要旨
高エネルギー地球科学は宇宙からの贈り物である高エネルギー素粒子を用いて「地球を見る新しい窓」を開く学際的な分野である。「新しい窓」である素粒子の観測によって,新しい何かを発見できる可能性が広がった。1936 年,「透過力の強い素粒子」であるミューオンがアンダーソンにより発見され,鉱山やピラミッドの内部で精力的にミューオン観測が行われてきた。20 世紀後半から21 世紀はじめにかけて,コンピュータ処理速度の目覚ましい向上によって,最先端の素粒子観測装置を用いて,地球を対象としたミューオン観測を行えるようになってきた。得られたデータをこれまでに積み重ねられたミューオン観測のデータや理論と比較することによって,地震波では見たことがない細かな火山体の姿が見えてきた。本講演ではミューオンによる火山体の透視の原理をわかりやすく解説し,その展望を最近明らかにされた実例を基に考察する。