地学クラブ講演会(第256回)の予定
タクラマカン砂漠は、いつどのようにして出来たか?

多田隆治氏(東京大学教授)

平成22年2月19日(金)14時から
東京地学協会講堂

要旨:
タクラマカン砂漠は、世界第2位の広さを誇る砂砂漠で、北半球における主要なダスト供給源であり、そこから放出されるダストは、グリーンランドにまで達する。こうしたダストの影響は、気候変動を考える上でも重要で、その起源や生産過程を知る事は、近未来の気候変動予測の上でも意味がある。こうした問題意識から、タリム盆地に於けるダストの起源と生産過程を調べる研究を2006年から開始した。その研究過程で、タクラマカン砂漠の起源についても分かって来た。我々は、ダストや砂漠砂の主要構成鉱物であり、風化にも強い石英に着目し、タリム盆地に流入する河川の堆積物について、その電子スピン共鳴(ESR)信号強度と結晶化度を測定して、供給源の特徴付けを行ない、その結果を、タクラマカン砂漠の砂や、タリム盆地南縁の丘陵に堆積する山岳レス堆積物中の石英のESR信号強度や結晶化度と比較し、供給源を推定した。更に、タリム盆地南縁に分布する鮮新世~更新世の扇状地堆積物に挟在されるレス堆積物についても、それらの値を測定する事により、ダストや砂漠砂の供給源の時代変化を推定した。その結果、タクラマカン砂漠の砂は、タリム盆地に流入した河川堆積物の細粒部がダストとして盆地外に放出され、粗粒粒子のみが残る事により形成されたもので、およそ500万年前頃から堆積しだした事、特に、350万年前以降、崑崙山脈西部~カラコルム山脈の隆起、浸食が激しくなった事に伴って盆地内に供給された土砂の寄与が大きい事が分かって来た。