「地下水位変化から地震前後の地殻変動を推定する試み-現状と展望-」

小泉尚嗣氏(産総研活断層・地震研究センター 地震地下水研究チーム長)

平成23年2月22日(火)14時時00分より
東京地学協会講堂において

要旨
我々は、地下水位変化(間隙圧変化)を主に観測し、得られたデータを多孔質弾性論(応力・歪・含水量・間隙圧の相互関係を示した理論)を用いて地殻変動(主に体積歪変化)に換算することで,地下水観測による地震予知研究における理論面の弱点を克服でき地震予知に貢献できると考えている。「地下水位データを地殻変動データに換算することのメリット」として以下の4点がある。

 

  1. 帯水層の広がりに相当する範囲の地殻変動の空間的な平均値を測定できること。
  2. 地殻変動を測定する通常の観測機器とは独立な観測であることから,それらのデータと比較・検討することで推定された地殻変動の信頼性が増すこと。
  3. 既存の地下水データ・地下水位観測設備の利用により,近代的観測の行なわれていない場所・時代での地殻変動を推定できること。
  4. 地下水位等の観測機器は,通常の地殻変動の観測機器に比べて安く扱いも簡単なこと。

 

本講演では,地震前後の地殻変動を把握するための地下水位観測の役割について,「夢」も含めて我々の考えを述べたいと思う。