「東北地方太平洋沖地震の概要」

岡田義光氏(防災科学技術研究所 理事長)

平成23年7月15日(金)14時00分より
東京地学協会講堂において

要旨
2011年3月11日,我が国の観測史上最大となるM9.0の「東北地方太平洋沖地震」が発生して巨大な津波が押し寄せ,2万3千人を超える死者・行方不明者を生じる未曾有の大災害となった。
この地震は太平洋プレートと北米プレートの境界で発生した低角逆断層型地震であり,震源域の大きさは500km×200kmという巨大なものであった。震源域周辺では陸地でも海底でも大きな地殻変動が観測され,また色々な発震機構解をもつ大量の余震が東日本の広域にわたって発生した。なお,この地震に関しては強震動,広帯域地震波形,津波,地殻変動データに基づいて様々な断層モデルが提出されている。
この地震の2日前にはM7.3の前震が発生したが,次に続く大地震の前兆であるとは想像されなかった。また,東北地方沖合における海溝型地震の長期発生予測においても,このような巨大地震の発生は想定されていなかった。このように巨大な地震の発生は,近隣地域での海溝型大地震やアウターライズ地震,内陸の大地震,そして火山の噴火など,さまざまな地学現象を誘発することが懸念され,今後しばらくは注意が必要である。