「より安心安全な地的環境を目指して」

 春風の候、皆様方にはいよいよご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は東京地学協会に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。本年も恒例の春季特別講演会を開催いたします。地震に伴う地盤の液状化について斯界の権威に分かりやすくかつ最新の情報を伝えてもらう企画です。どうぞ皆様お誘いあわせてご参加くださるようご案内申し上げます。なお、予約不要・参加費無料で、会員・非会員を問わずご参加いただけます。

日時: 平成27年6月13日(土)15:00~17:00

場所: 東京地学協会 地学会館二階 講堂(東京都千代田区二番町 12-2)

交通: 東京メトロ麹町駅5出口を出て左へ徒歩1分

 

15:00-16:00

講演「地震考古学から見た遺跡の液状化跡」

寒川 旭(産業技術総合研究所客員研究員)

講演要旨:
 考古学の遺跡発掘調査の現場で液状化現象の痕跡が見つかり、遺構(住居跡など)や遺物(土器など)との前後関係から、原因となった地震の年代を絞り込むことができます。さらに、液状化現象にともなう地層や遺構の変形、砂・礫などの粒子の動きなどを観察することも可能です。研究例として、まず、南海トラフの巨大地震について、文献史料と液状化跡からわかった過去2000年間の歴史を紹介します。さらに、内陸の大地震について、1596年に京阪神・淡路地域を襲った伏見地震を中心に、地震を引き起こした活断層と、その地震で生じた液状化跡について説明します。この他、礫を多く含む地層が液状化した例、液状化現象にともなって砂や礫が流動する様子、側方流動による遺構の変形など、液状化現象にともなう興味深い観察結果についてお話します。

 

16:00-17:00

講演「東日本大震災、日本列島650kmにわたる液状化被害の実態と課題」

若松加寿江(関東学院大学理工学部教授)

講演要旨:
 東日本大震災では、東北地方と関東地方の全県にわたる広域な液状化が発生した。その範囲は、南北約650kmである。国土交通省の集計によれば、宅地被害件数は26,914件にものぼっている。本講演では、この震災における液状化被害の実態を報告すると共に、液状化被害地域の土地条件・地盤条件や地震動強さとの関係などを俯瞰する。また、震災後から4年の間に創設された住宅など小規模建築物の液状化対策に係わる公的な取り組みや法改正などを紹介すると共に、今後の課題についても話題提供を行う。

▲東北地方太平洋沖地震による液状化発生地点の分布