太古代-原生代の海洋底環境の復元:DXCL陸上掘削の成果

清川昌一(九州大学大学院理学研究院 地球惑星科学部門 准教授 専門分野 地球進化史

日時:平成24年7月20日(金)14:00〜15:30
場所:東京地学協会講堂

要旨:40億−25億年前の太古代は,外の惑星では見られない大陸地殻が形成し,還元的である大気が徐々に酸化していく環境へ移り変わる時代である.演者はオーストラリア,南アフリカ,カナダ,ガーナにおける太古代・原生代のグリーンストーン帯から海底堆積物を丹念な地質調査により導き出し,層序を確立しながら,深海底の変遷とそこから見られる地球環境の変動記録を読み取ってきた.特にオーストラリア・ピルバラクラトン内の32億年前のデキソンアイランド・クリバービル層について詳細な地質図作成から,層序を立ち上げ,32億年前の海底の状況を復元している. 2007,2011年には陸上掘削(DXCL12)を行い,当時の海底堆積物の新鮮で連続した地層を掘り抜くことに成功した.そこでは当時の海底カルデラ付近で沈殿した有機物に富む黒色頁岩と黄鉄鉱層の沈殿物が取得でき,海底での硫酸還元菌の活動や縞状鉄鉱層形成の層序が鮮明に見えてきた.太古代当時の海底熱水活動・生物活動・鉄沈殿作用について美しい露頭写真とともに解説する.