「付加体の形成の意義と今後の展望:水平テクトニクスと重力の役割」

筑波大学名誉教授 小川勇二郎氏

平成21年7月21日(火)14時から
東京地学協会講堂において

要旨
近年の多方面からの精力的な研究により、付加体の認定、メカニズムとプロセスなどについては、ほぼ確定された認識に至っている。実験的にも再現可能な現象と認められている。付加体に関しての最大の問題の一つであった、流体移動に関してもほぼ解明された。特に、海溝堆積物の存在が最も重要な鍵を握っていることとして、世界中の実例が解き明かされた。わが、南海トロフについても、その大半で詳細な発達史が編めるようになった。しかし、付加体の発展の後にどのようなことが起きるのか、付加体は継続的に成長するのか、付加体類似の構造は何を意味するのか、付加体形成における重力の役割はどうか、などに関しては、依然として謎である。今回は、これらの諸問題の展望を最近明らかにされた実例をもとに考察する。